副業をする場合、個人事業主として始めるべきかと悩む方も多いです。この記事では、副業で個人事業主になることのメリットと注意点、手続きの方法について説明します。
個人事業主として副業をするメリットは、経費の計上や青色申告の選択です。デメリットは確定申告の手間やプライベート時間の減少です。副業を成功させるための具体的な職種も紹介します。
本記事を読むと、副業で個人事業主になるための明確な道筋が見えてきます。副業を始めたい方は不安を解消し、実際に行動に移すための一歩を踏み出しましょう。
個人事業主とは個人で事業を行う人のこと
個人事業主とは、自分の名前で事業を行い、法人格を持たない個人のことです。企業や団体ではなく、1人の個人が所有や運営、事業に伴うリスクをすべて担う形です。個人事業主として得た事業利益は、所得として扱われ、所得税が課されます。
法人税の対象外であるため、税金の計算や申告方法に違いがあります。多くの起業家が初期段階で個人事業主を選び、事業が軌道に乗った場合に法人化を検討するのが一般的です。開業届の提出や確定申告も、自ら行う必要があります。個人事業主は事業の種類に関わらず、柔軟な働き方を希望する人にとって適した選択肢です。
個人事業主と会社員の違い
個人事業主と会社員は、働き方において大きな差があります。個人事業主は自ら事業を立ち上げ、経営の自由度が高い一方で、リスクも自分で負担する必要があるので注意しましょう。税金の計算や納税手続きなど、経理に関するすべての業務を管理します。
会社員は企業に雇用されるため、安定した給与を受け取れます。雇用保険や社会保険の恩恵を受けられ、経理処理についても企業が担うため、手続き面での負担は少ないです。
» 開業届の書き方
副業で個人事業主になるメリット
副業で個人事業主になることには、税金や経済面で多くのメリットがあります。メリットは以下のとおりです。
- 経費の計上ができる
- 青色申告が選択できる
- 本業と副業の所得を損益通算できる
- 継続的な副収入が期待できる
- 独立の足掛かりになる
副業を始める際には、具体的な手続きや注意点を理解しましょう。
経費の計上ができる
経費の計上は個人事業主にとって大きなメリットです。事業に関連するさまざまな費用を所得から差し引けるため、実質的な税負担を軽減できます。事業で使用する交通費や通信費、オフィス用品などの消耗品費は経費として認められます。自宅を事務所として使用している場合は、家賃や光熱費の一部が経費として計上可能です。
自己啓発のための専門書やセミナー参加費も経費に計上できます。パソコンや事務機器などの機材購入費用は、減価償却費として経費に含められます。経費を適切に計上して、事業にかかるコストを効率的に管理し、節税効果を得ましょう。
青色申告が選択できる
青色申告を選択すると、個人事業主は税務上の多くのメリットを受けられます。経費の範囲が広がり、税金の負担を軽減できます。最大65万円の青色申告特別控除を利用して、納税額を大幅に削減しましょう。
事業で損失が出た場合、3年間繰り越して控除できるため、事業初期段階でも経営を安定させられます。家族を雇用する場合、給与を経費として計上して、税負担をより軽くできます。
青色申告には正確な帳簿の記録が重要であり、簿記の知識が必要です。開業後2か月以内に青色申告承認申請書を提出し、きちんと事業記録を保持しましょう。副業として個人事業を始める際には、青色申告を選択するかどうかも大切なポイントです。税金の節約はもちろん、長期的な事業戦略の一環として青色申告を利用してください。
» 開業届・青色申告を出す際のポイント
本業と副業の所得を損益通算できる
個人事業主にとって、本業と副業の所得の損益通算ができることはメリットです。副業で損失が出た場合、その損失を本業の所得と相殺して税負担を軽減できる可能性があります。
副業が赤字の場合も節税効果が得られ、本業の所得が高いほどメリットは増します。損益通算を利用するには青色申告が必須条件です。青色申告には一定の要件があるため、条件を満たしているかを確認しましょう。
継続的な副収入が期待できる
継続的な副収入が得られることは、副業で個人事業主になる大きな魅力の1つです。個人事業主として活動することで、本業以外の定期的な収入源ができ、収入の安定性が高まります。
不動産を保有すると毎月の家賃収入が見込めたり、株式投資では配当金で収益を得られたりします。オンライン上でコースや電子書籍を販売すれば、一度作成したものが長期にわたって売上を生み出す可能性もあるでしょう。
アフィリエイトプログラムやYouTube広告の活用も有効で、一定の視聴者や読者がつけば自動的に収入を得られます。初期は労力がかかりますが、後から手間がかからなくなる場合が多いです。フリーランスとしてスキルを活かし、定期的にクライアントから仕事を受けるのも1つの選択肢です。
アプリやソフトウェアの開発でライセンス料を得たり、サブスクリプションサービスで安定収益を得たりすることもできます。副業で得た収入は本業の収入と合わせて生活の質を高め、経済的な自由度を向上させます。副業で個人事業主になることは、時間や場所に縛られず、自分の能力や資源を活かして収入を増やす大きな機会になるでしょう。
独立の足掛かりになる
個人事業主になることは、独立への大きな一歩です。副業を始めると、スキルや経験を市場で試す機会が得られます。自分の仕事への評価を得る絶好のチャンスとなり、自信を持って仕事に取り組むことが可能です。自己責任で業務を行うため、経営者としての姿勢が身につく貴重な経験ができます。
仕事の進め方や判断力が養われると、将来の独立に向けたキャリアプランが立てやすいです。自分のサービスや商品を市場に投入すると、独自のブランドを築けます。個人事業主としての独立性を高め、市場での認知度を上げましょう。
副業が本業の収入を上回るようになれば、職業のシフトも柔軟に決められます。リスクを抑えながら、自分のビジネスを育て上げることが可能です。副業は単なる副収入の源泉にとどまらず、キャリアにおける重要な転換点になるチャンスになり得ます。
副業で個人事業主になるデメリット
副業で個人事業主になることには、いくつかのデメリットがあります。以下のとおりです。
- 確定申告に手間がかかる
- 失業保険の対象外になる
- プライベートの時間が減る
さまざまなリスクを考慮し、副業で個人事業主として事業を始めるかどうかは慎重に判断してください。
確定申告に手間がかかる
個人事業主にとって、確定申告は大きなデメリットになり得ます。確定申告のプロセスは複雑で、細心の注意が必要な作業が数多く含まれているからです。収支の記録が必要であり、帳簿の正確性と多くの文書の保管義務を伴います。
青色申告や白色申告にかかわらず、記入する項目の多さには注意が必要で、必ず期限内に申告を完了させなければなりません。税務知識が求められる場面もあり、特に青色申告特別控除の利用は専門知識が必要です。
電子申告では事前登録や認証が必須で、事業の成長に伴い消費税申告の必要性も発生します。税理士への依頼はコストがかかりますが、専門知識がないと自己申告は難しくなります。事業の性質上、年間を通じて収入が安定しない点も確定申告時の重要な課題です。確定申告に多大な労力がかかることは明らかです。
» 青色申告と白色申告の違いを解説
» 副業で確定申告が必要になる基準、確定申告の種類とやり方を解説!
失業保険の対象外になる
失業保険は、失業した際に一定期間給付金を受け取れる制度です。すべての人が給付を受けられるわけではありません。自営業者やフリーランサーは雇用保険の加入資格を持たないため、給付の対象にはなりません。
会社員から個人事業主へ転向し、開業届を提出していた場合、以前の会社員としての保険給付資格を失います。本業を失った状態で副業として個人事業を行っている場合では、失業保険の給付を受けるのは難しいです。継続して事業活動をしていると、失業しているとはみなされず、給付の要件を満たしません。
副業で個人事業を営む際は、失業保険に依存せず、経済的な計画をしっかりと立てましょう。
プライベートの時間が減る
副業で個人事業主になるデメリットとして、プライベートの時間の減少があります。副業による業務が増えると、自分の時間が犠牲になりがちです。仕事とプライベートの線引きが難しくなり、休日や夜間まで業務に追われるケースもあります。
自己管理が不十分だと、家族や友人との貴重な時間まで失う可能性があります。プライベートな時間を確保するのが難しくなると、ストレスや疲労が積み重なりやすいため注意が必要です。
副業で個人事業主になるための手続き
副業で個人事業主になるためには、必要な手続きを行うことが重要です。主な手続きは以下のとおり。
- 開業届を提出する
- 青色申告承認申請書を提出する
手続きを適切に行うと、副業で個人事業主としての活動を始められます。
開業届を提出する
副業で個人事業主になる場合は、開業届の提出が必要です。手続きは事業を開始した日から1か月以内に行いましょう。開業届は郵送または直接持参で提出できます。提出には専用の様式があるため、税務署で入手もしくはダウンロードを行い、必要事項を記入してください。
開業届を提出すると税務上の手続きがはじまり、事業者として正式に認められます。開業届が提出された場合、事業所得に対する税務処理が開始され、青色申告の提出が可能になります。提出が遅れると税務上のメリットを受けられなくなる可能性があるため、開業したら速やかに行いましょう。
青色申告承認申請書を提出する
副業で個人事業主になると、青色申告を選択できます。青色申告を行うためには、「青色申告承認申請書」を必ず提出してください。申請が認められると、税務上のさまざまな優遇措置の恩恵を受け、最大65万円の特別控除が受けられます。
提出期限は開業日から2か月以内と限られているため、副業を始めたらすぐに手続きしましょう。提出する場所は所轄の税務署で、開業届を提出するタイミングや開業届を提出した後に手続き可能です。一度承認を受けると、廃業や取り消しをしない限り、毎年自動的に青色申告が適用されます。
記帳方法に関する要件を満たしていることも重要なため、適切な会計管理を心がけましょう。
申請は個人で行えますが、必要であれば代理人を通じて提出することも可能です。正しい様式を用いて、必要な情報を正確に記入してください。青色申告承認申請書を提出すると、節税と経営管理の効率化の両面でメリットを受けられるため、副業を考えている人は検討しましょう。
» 個人事業主必見!青色申告承認申請書の書き方
副業で個人事業主になるときの注意点
副業で個人事業主になる際、いくつかの注意点を押さえておきましょう。
- 住民税は普通徴収を選択する
- 青色申告できる所得の種類が限られる
- 開業届の提出期限・提出先に注意する
副業で個人事業主になるには、さまざまな注意点が存在します。十分に理解して適切な対策を講じると、副業をスムーズに実行できます。
住民税は普通徴収を選択する
住民税の支払い方法は、普通徴収と特別徴収の2種類です。会社員の場合は、給与から住民税が天引きされる特別徴収が多く採用されています。個人事業主は普通徴収と特別徴収のどちらかを選べます。
普通徴収を選択する場合、税金は自分で納付が必要です。税額通知書を受け取り、自ら指定された期日までに納めましょう。普通徴収のメリットは、自身の財務管理の自由度が高くなる点ですが、納税の管理は自己責任となります。遅延や未納があると、ペナルティを受けるリスクがあるため注意が必要です。
本業の勤務先に通知せずに副業している場合、特別徴収を選択すると、副業の事業所得に対する住民税が未納になります。住民税の納付方法を検討する際は、事業規模や財務管理のスタイルを考慮し、適切な方法を選んでください。
» 副業が会社にバレる理由とバレないための方法を解説!
青色申告できる所得の種類が限られる
税務上のメリットが大きい青色申告ですが、申告できる所得は特定の所得に限られています。該当するのは以下のとおりです。
- 一次産業の所得(農業や林業、漁業)
- 二次産業の所得(商業や工業)
- 自由業の所得(専門性のあるプロフェッショナルなサービス)
- 不動産からの所得
- 一定の条件を満たすその他の事業所得
上記の範囲内で事業を営む場合のみ、青色申告の恩恵を受けられます。青色申告で申告したい方にとって、事業所得に該当するかどうかは重要です。副業を始める際にはしっかりと把握しておきましょう。
開業届の提出期限・提出先に注意する
事業を開始したら、開業届を提出する必要があります。手続きは開始日から1か月以内に完了させる必要があり、提出先は事業所のある場所を管轄する税務署です。
提出が遅れると税務上の優遇措置を受ける機会を失う恐れがあるため、期限内に手続きを行ってください。開業届の書式は国税庁の公式ホームページからダウンロードが可能です。
開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出すると、青色申告が可能になり、所得税に関してさまざまな特典が得られます。適切な手続きを行うことで、税務上のメリットを最大限に活用できます。
» 個人事業主になるには?手続き&準備ガイド
副業におすすめの職種
副業を始める際には職種選びが重要です。時間の制約がある副業に最適なのは、自宅で柔軟に作業ができるタイプの副業です。
- 物販
- サイト運営
- Web制作
副業は、自分のスキルや興味、生活スタイルに合ったものを選択しましょう。適切な副業を見つけて効率的に収入を得てください。
物販
物販は副業として人気があります。インターネットを利用して比較的簡単に始められるからです。物販でビジネスを行う際は、市場の需要と競合他社の状況を調査し、適切な商品を選定しましょう。利益率の高い商品を選んだり、ニッチな市場を狙ったりして、競争を避けながら収益を上げましょう。
オンラインショップやオークションサイトでの出品は一般的な方法です。複数のセールスチャネルを持つと、リスク分散を図れます。在庫管理と物流の効率化は収益性を大きく左右するため、注意深く取り組みましょう。顧客がリピーターになるように、カスタマーサポートの品質を高めることも重要です。
集客力を高めるためには、デジタルマーケティングが効果的です。特にSNSやブログを活用した情報発信は、ブランド形成に有効であり、売上向上につながります。ビジネスを安定して運営するためには法規制や税務に関する知識を身に付けることも重要です。計画的に物販ビジネスを進めると、副業でも収入源を確保できます。
サイト運営
サイト運営は、副業に取り組む多くの個人事業主に人気のある分野です。重要なのは、SEO対策と訪問者が求める情報の提供です。モバイルフレンドリーなサイトを構築し、使いやすさと内容の充実に努めると、訪問者を獲得できます。サイトの速度最適化や内部リンクと外部リンクの適切な活用も、ユーザー体験の向上に役立ちます。
ソーシャルメディアでのプロモーションや、ユーザーエンゲージメントを促進して、訪問者との関係を深めましょう。収益化のために、アフィリエイトや広告を利用し、アナリティクスツールでサイトパフォーマンスを分析してください。A/Bテストを行うことで、サイトの改善が図れます。
さまざまな取り組みを通じて、安定した副収入を得ましょう。サイト運営は副業として始めやすく、長期的に行っていくと独立へつながります。適切なプライバシーポリシーや利用規約を設けて、高品質なオリジナルコンテンツを提供してください。信頼されるサイトを築き上げましょう。
Web制作
Web制作は、インターネット上で情報を発信するために重要な手段の1つです。効果的なWebサイトを作るためには、さまざまなスキルが求められます。HTMLやCSSの知識は基本ですが、JavaScriptを使った動的な機能の実装も重要です。
Webサイトには、レスポンシブデザインを取り入れましょう。さまざまなデバイスで見やすいサイトを作ると、ユーザーエクスペリエンス(UX)を向上できます。UXを向上させるデザイン能力は、ユーザーにとって快適なサイト使用体験を提供する上で重要です。
UXが向上するとユーザーがサイトで過ごす時間を延ばせます。サイトが検索エンジンで上位に表示されるためには、SEO対策を意識したコーディングが必要です。
CMSの利用やカスタマイズを行って、サイトの速度とパフォーマンスを最適化しましょう。クライアントの要望に応えるウェブソリューションの提供など、さまざまな技術が求められます。Web制作は、サイトの作成だけでなく、維持管理、セキュリティ対策を含めた長期的な関わりが必要です。最新のトレンドと技術を学び続けましょう。
副業としてWeb制作を行う場合、創造的かつ柔軟な働き方が可能です。自宅や移動時間を活用して、クリエイティブな作業に没頭できます。スキルを磨くことは、将来的にフリーランスとして独立する際の貴重な経験です。
» おすすめ副業リスト
まとめ
副業として個人事業主になると、税金面でのメリットがあります。継続的に副収入を得られる点が魅力です。経費を計上できたり、青色申告を利用して税負担を軽減したりできます。
本業と副業の所得を相殺できるため、効率的な収入管理ができます。個人事業主になると、確定申告の手間がかかり、失業保険が非対象になる可能性が高まったりする点には注意が必要です。個人事業主になるための重要な手続きとして、開業届や青色申告承認申請書の提出があります。提出期限や方法について理解しておきましょう。
副業としておすすめの職種は物販やサイト運営、Web制作などです。それぞれ独自の特徴があるので、スキルや興味に合うジャンルを選んでください。個人事業主として副業する際は、さまざまな情報を活用して計画的に進めましょう。