副業で得た収入がある場合は、適切なタイミングで確定申告を行う必要があります。初めて確定申告をする場合、手順がわからず戸惑う方は多いです。
この記事では、副業をしている方が行う確定申告の具体的な基準や種類、手順などを解説します。記事を読めば、副業による所得管理が楽に行えるようになります。
副業とは本業以外の仕事で収入を得ること
副業とは、本業以外で行う仕事や収入源のことです。副業を始める際は、まず現在の雇用契約で副業が許可されているかを確認する必要があります。
よくある副業の形態は以下のとおりです。
- フリーランス
- 業務委託契約
- アルバイト
多くの方が経済的な安定や新しいスキルの習得を目的に副業を行っており、近年ではインターネットを利用した副業が増加傾向です。
【所得別】副業で確定申告が必要になるかどうかの基準
副業で得た収入が確定申告の対象となるかは、所得の種類と金額によって決まります。副業の収入と本業の給与を合算し、給与所得控除を引いた金額が課税対象となります。
副業で確定申告が必要となるケースは、以下のとおりです。
- 給与所得
- 事業所得・雑所得
- 不動産所得
給与所得
給与所得とは仕事をして得られる収入のことです。毎月の給料だけでなく、ボーナスや特別な手当も含まれます。会社から給与以外に特別な手当や報酬を受け取った場合も給与所得に該当します。
本業の仕事に加えて副業をしている場合、収入が年間20万円以上になると確定申告が必要です。副業からの収入で給与所得控除を利用すれば、税金を計算する際に給料から一定の金額を差し引けます。
事業所得・雑所得
副業からの収入は、主に事業所得と雑所得の2種類です。事業所得は自分の事業から得た利益のことです。雑所得は一時所得や賞金など、他に分類されない所得全般を指します。
副業から得た収入が事業所得や雑所得に該当する場合は、20万円以上の収入があれば確定申告が必要です。事業所得では、経費を差し引いた金額が税金計算の基礎となります。雑所得は基本的には経費の控除が認められていません。
事業所得者には青色申告と白色申告の選択肢があり、それぞれ異なる税務上の優遇措置が受けられます。雑所得者は、収入の性質に応じた添付書類の準備が必要です。
不動産所得
不動産所得とは、賃貸収入や売却益など不動産から得られる利益のことです。賃貸収入がある場合は、収入から管理費や修繕費などの必要経費を差し引いた後の金額が課税対象になります。
所有する不動産を売却した際の譲渡所得も不動産所得に含まれます。不動産所得と他の所得を合算した合計所得金額が基礎控除額以上になる場合、確定申告が必要です。
副業の収入が20万円以下でも確定申告が必要になるケース
副業で得た収入が20万円以下でも、確定申告が必要なケースがあります。
以下のケースでは確定申告が必要となるため注意しましょう。
- 他の所得と合わせて年間の総所得が20万円を超える場合
- 本業の給与と合算して総所得が増え、税額が変動する場合
- 副業からの収入に関連する経費が本業で控除されていない場合
- 配偶者控除などの税制優遇を受けたい場合
- 事業や不動産所得の損益通算したい場合
- 配当所得や退職所得など別の所得がある場合
- 税務署から申告するよう指示があった場合
副業の収入だけでなく全体の所得状況を正確に把握することが、適切な申告には不可欠です。
副業の確定申告の種類
副業の確定申告は大きく分けて「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。それぞれの申告方法の詳細と、どちらを選ぶべきかを具体的に解説します。
青色申告
青色申告は事業活動から得られる所得に対して適用できる申告方法です。青色申告を利用すると最大65万円の特別控除を受けられ、税負担を軽減できます。青色申告は記帳義務があるため、正確な帳簿を作成しなければいけません。青色申告を希望する場合は「青色申告承認申請書」を提出する必要もあります。
青色申告のメリットは以下のとおりです。
- 赤字が出た場合の損益通算
- 青色申告専従者給与の控除
- 小規模企業共済等掛金の控除
- 電子申告による更なる控除
青色申告では副業の収入が少ない方でも、本業と合計した所得に控除が適用されます。事業の規模が大きい、または将来的に利益が増える見込みがある場合は、青色申告が有利です。
» 開業届・青色申告を出す際のポイント
» 個人事業主必見!青色申告承認申請書の書き方
白色申告
白色申告は、誰でも簡単に始められる基本的な確定申告の方法です。特別な手続きや承認を必要とせず、基本的な控除が利用できます。白色申告は帳簿の記録が比較的簡単になる一方で、青色申告に比べて控除額が少ない特徴があります。
白色申告は経費が少なく、事業所得が650万円以下の個人事業主に適した申告方法です。節税メリットは少ないものの手軽に申告できるため、確定申告に慣れていない方や初めて副業を行う方にも適しています。後から青色申告に変更する場合は、年末までの申請が必要です。
青色申告と白色申告どちらを選ぶべきかの基準
青色申告と白色申告の選択によって、税務上の優遇措置や記録の手間が大きく変わります。選択の際は年間の副業収入を基準にすることをおすすめします。
青色申告では最大65万円の特別控除を得られる一方、厳密な記帳や帳簿の提出が必要です。副業収入が38万円以上で事業の規模が小さい場合は、記帳が簡単な白色申告が適しています。
経理にかけられる時間や労力を総合的に考慮して選択することも重要です。控除額だけでなく、自分の副業状況を見極めるようにしましょう。
» 青色申告と白色申告の違いを解説
副業で確定申告をするときの手順
副業で得た収入に対して確定申告を行う際は、適切な手順を踏むことが重要です。
以下の手順をそれぞれ具体的に解説します。
- 必要書類をそろえる
- 所得金額・所得税を計算する
- 確定申告書を記入する
- 確定申告書を提出する
必要書類をそろえる
確定申告における必要書類は申告の根拠となる重要な資料であり、正確な申告のためには事前の準備が欠かせません。
必要書類には以下が挙げられます。
- 収入に関する証明書類:源泉徴収票、給与明細、領収書など
- 支出に関する証明書類:領収書、請求書、契約書など
- 摘要書:副業での業務内容や収支の概要を記載したもの
- 銀行口座の明細書:副業収入が入金された履歴がわかるもの
- 身分証明書:運転免許証、パスポートなど
- 青色申告を行う場合は青色申告承認申請書
- 前年度の確定申告書の控え
- 消費税の課税事業者であれば消費税に関する書類
- その他特定の控除を受けるための証明書類:住宅ローン控除証明書など
所得金額・所得税を計算する
副業から得た収入に対する税金の計算方法として、総収入金額から必要経費を差し引き、所得金額を算出します。所得金額は、税金計算の基礎となる重要な金額です。必要経費を差し引いた金額から所得控除を適用し、課税所得を決定します。
以下は、個々の状況に応じて利用できる所得控除です。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
課税所得が確定したら、所得税率を適用して税額を計算します。税額は税率表や公式を用いて正確に計算しましょう。副業をしている場合、青色申告と白色申告で計算方法が異なる点に注意してください。青色申告のほうが白色申告よりも控除額が多くなります。
所得税の計算後、住民税の計算も必要な場合があります。源泉徴収などの仮払い税金も考慮に入れ、最終的な還付金または追加納税額を算出してください。税額の計算を終えたら、確定申告書に結果を記入し手続きを進めます。
税金の計算に難しいイメージを持つ方は多いですが、適切に手順を踏めば誰でもできるプロセスです。控除を活用し正確な税額を算出すれば、不要な税金を支払わずに済むメリットも得られます。
確定申告書を記入する
確定申告には申告書Aと申告書Bがあり、個々の状況や所得の種類によって適切なものを選ぶ必要があります。
申告書に記入する内容は以下のとおりです。
- 個人情報:氏名、住所、生年月日
- 所得種類:給与所得、事業所得、雑所得など
- 各所得に関する収入金額や必要経費の計算結果
- 控除項目:基礎控除、社会保険料控除など
- 所得税額
- 銀行口座などの振込先情報
すべての項目を記入した後は内容を再度確認し、署名や捺印を忘れないようにしましょう。
確定申告書を提出する
確定申告書を提出する方法は以下の選択肢があります。
- 税務署に直接行く
- 郵送で送る
- インターネットで電子申告する
電子申告を選択する場合は、ICカードリーダーやマイナンバーカードが必要です。どの方法を選ぶ場合でも、提出期間内に提出することが重要です。提出期限後に申告する場合は、延滞税が発生する可能性があります。
書類提出時には証拠資料を添付することも忘れないようにしましょう。税金の支払いがある場合は、納税額を確認し振込または税務署で直接納付をしてください。
申告書の提出後は受領確認書が郵送もしくは電子的な方法で発送されるため、大切に保管してください。所得税の還付がある場合は、提出後数週間で指定口座に振込まれます。後から申告内容の誤りに気付いた場合は、訂正申告書を提出して修正してください。
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副業の確定申告のよくある質問
副業の確定申告に関して、よくある以下の質問にお答えします。
- YouTubeやブログなどの副業収入の申告方法は?
- 過去に確定申告漏れがあったときはどうすればいい?
- 副業で得た収入に対して経費計上はできる?
- 副業の収入が複数ある場合の申告方法は?
YouTubeやブログなどの副業収入の申告方法は?
YouTubeやブログで得た広告収入やアフィリエイト収入などは、雑所得として扱われるのが一般的です。申告では収入だけでなく、ウェブサイト運営や動画制作に関連する経費も正確に計算する必要があります。
経費には以下が含まれます。
- 撮影機材の購入費
- サーバー代
- 編集ソフトのライセンス料
経費を証明するために、領収書や支払証明書を保管しておくことが大切です。経費が収入を上回って赤字になる場合は赤字申告も可能です。
過去に確定申告漏れがあったときはどうすればいい?
過去に確定申告漏れがあった場合、速やかに修正申告を行う必要があります。過去5年間の申告に対する修正が可能です。申告漏れが発覚してから修正申告を行うことで、加算税や延滞税の負担を減らせる場合もあります。
修正申告では漏れた収入や必要な情報を正しく記載しなければなりません。自分で修正申告を行うのが難しい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
» 国税庁【申告が間違っていた場合】(外部サイト)
副業で得た収入に対して経費計上はできる?
副業で得た収入に対する経費計上は可能です。経費とは、収入を得るために直接必要だった費用を指します。
経費に該当する費用の例は以下のとおりです。
- 交通費
- 道具
- 材料費
- 通信費
経費を計上することで税務上の収入額を減らし、支払う税金を減らせます。青色申告を選んだ場合は、最大65万円の特別控除が受けられます。
副業の収入が複数ある場合の申告方法は?
副業の収入が複数ある場合、年間で合計20万円を超えると確定申告が必要です。各副業の収入と経費を正確に記録し、すべての収入を合算して申告しなければいけません。
申告をスムーズに進めるためには、すべての収入源からの収入と経費を明確にリストアップしてください。記録した内容を基に、e-Taxを利用してオンラインで申告できます。申告時に不明点がある場合は、税務の専門家に相談しましょう。
副業で確定申告する際のポイント
副業で得た収入について確定申告する際には、以下のポイントにも注意しましょう。
- 住民税の申告が必須
- 副業が会社にバレないための対策
- 納税義務を怠った場合のリスク
住民税の申告が必須
住民税の申告は、居住地の自治体に対して行う必要があります。確定申告を行った後、申告内容に基づいて翌年の住民税が計算されます。給与所得以外で副業やフリーランスなどの収入がある場合は自分で住民税の申告をしなければいけません。申告を怠ると追徴税が課されるリスクがあるため、正確な申告を心がけましょう。
副業が会社にバレないための対策
副業が会社にバレないためには、以下の対策が有効です。
- 給与収入とは別の銀行口座を設ける
- 副業収入は個人名で受け取る
- SNSやウェブサイトにおいては本名や会社名を公表しない
- 会社の設備やリソースを副業に使用しない
- 会社の就業規則や契約書で副業が禁止されていないかを確認する
- 副業での収入に関する情報は信頼できる人とのみ共有する
- 税務申告は電子申告で行う
給与収入とは別の銀行口座を設けると副業収入の管理がしやすくなり、金融記録が混在するリスクを回避できます。副業収入は個人名で受け取ると、会社への報告漏れを防げます。
会社の就業規則や契約書で副業が禁止されている場合は、副業を控えるか、許可を得る努力を払いましょう。副業での収入に関する情報は、プライバシーを守るために信頼できる人とのみ共有することが賢明です。税務申告をする際にも、電子申告を選ぶと職場に知られずに済みます。
» 副業が会社にバレる理由とバレないための方法を解説!
納税義務を怠った場合のリスク
納税義務を怠った場合、税務調査の対象となり、過去数年間の収入や支出について詳細なチェックが行われる可能性があります。不正が発覚すると罰金や遅延税などのペナルティが科される点は、軽視できないリスクです。
納税義務の不履行が信用情報機関に記録され、ローンやクレジットカードの利用に大きな制限がかかることもあります。悪質な脱税と見なされた場合は、法的な措置として罰金刑や懲役刑を含む刑事罰が課される恐れもあります。
会社勤めの方の場合、納税義務を怠ると就業規則違反となり、職場での信用失墜や懲戒処分につながりかねません。リスクを避けるために納税の期限とルールを守り、必要があれば専門家のアドバイスを求めましょう。
まとめ
副業とは本業以外の仕事や収入源のことです。年間20万円以上の副業収入がある場合には、確定申告を行う必要があります。副業収入が20万円以下の場合でも、給与所得と合算して総所得が基礎控除額以上の場合は申告が必要です。
確定申告には青色申告と白色申告の選択肢があり、それぞれ税務上に置ける優遇措置が異なります。青色申告と白色申告のどちらを選ぶかは、事業の規模や記帳の習慣、利用したい税制優遇によって決めるようにしましょう。記事で得た知識を活用し、適切な確定申告と所得管理を行ってください。