「独立して自分のビジネスを始めたけど、税金の手続きが何もわからない…」と悩む起業家も多いのではないでしょうか。
個人事業主は開業届を出すことで、大幅な節税が可能です。しかし知識がないとうまく制度が利用できず、損をしてしまうかもしれません。
この記事では、開業届の提出方法と青色申告について初心者にもわかるように解説していきます。記事を読めば、節税とスムーズな確定申告の方法を学べます。ぜひ最後までご覧いただき、自身の税務処理に役立ててください。
開業届とは
開業届は個人事業を始める際、税務署に提出する書類です。開業届を提出することで税務署にあなたが事業主であることが認識され、税に関する処理が開始されます。
開業届の提出対象者は、副業やフリーランスで事業を始めた方です。会社を設立する場合は提出する書類が異なるため、開業届は不要です。
開業すると税務上のさまざまなメリットが得られるため、新たに事業を始める際は提出をおすすめします。
提出期限は事業開始から1か月以内ですが期限を過ぎても罰則はとくになく、後から提出可能です。開業後は青色申告が行えます。
青色申告とは
青色申告は、個人事業主や農業者などが利用できる納税制度です。青色申告を利用すると税務上のさまざまな優遇措置を受けられます。
青色申告の対象となる所得は、以下の3種類です。
- 事業所得
- 不動産所得
- 山林所得
法人化せず個人で行う事業と会社に属さず業務契約で働くフリーランスの収入は事業所得にあたり、青色申告の対象になります。
青色申告制度では特別控除や青色申告特別控除などの控除措置があり、節税に役立ちます。中でも事業で出た赤字を繰越せる繰越控除は、青色申告にしかない魅力の1つです。
青色申告を行うには税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、承認されることが必須です。申告の際には事業に関する収入・支出を正確に計算した帳簿の作成が求められます。
承認を受けた後は原則5年間は申告方法を変更できないので注意しましょう。
開業届の提出方法
新しい事業を始めた際、開業届の提出は義務です。開業届の提出は、以下の3つの方法で行えます。
- 税務署の窓口で提出する
- 郵送で提出する
- e-Taxで提出する
税務署の窓口で提出する
税務署の窓口で開業届を提出する際には、事業内容や開業日を記載した書類が必要です。税務署によっては予約が必要な場合もあるので、訪問前にかならず確認しましょう。
税務署の開庁時間は、祝日をのぞく平日の午前8時30分〜午後5時まで。ただし時期によっては混雑し、整理券による入庁規制がかかることもあるので気をつけてください。
税務署に直接提出する際のメリットは、不明点があれば担当者に確認できることです。税務処理でわからないことはかならず質問しましょう。
書類提出が完了すると受領証を受け取れるので、絶対になくさないよう保存してください。要点をしっかりと押さえておくことで、スムーズに手続きが進むでしょう。
郵送で提出する
郵送で提出する場合は必要書類と返信用封筒を同封し、税務署の住所を正確に記入し送付します。書留や特定記録郵便を使えば送付した記録が残るため、後々のトラブルを避けられます。
また税務署の入り口に設置されている「時間外収受箱」への投函でも届出が可能。直接投函の場合、切手を貼るのは返信用封筒のみで良いため、切手代の節約にもなります。
開業届が無事に受理されたことは、提出後に届く受理通知で確認してください。
e-Taxで提出する
e-Taxは国税電子申告・納税システムで、税務署に出向くことなくネット上で開業届を提出できます。e-Taxの利用には、以下の3ステップを踏む必要があります。
- 電子証明書取得
- e-Tax専用ソフトまたはWebブラウザ利用
- 利用登録
最初に必須となるのが電子証明書です。電子証明書は税務署で発行してもらうか、マイナンバーカードを登録しましょう。
次に専用ソフトウェアかWebブラウザでe-Taxにアクセスし、利用登録を行います。登録できたら開業届を手順に沿って提出し、受理通知を受け取れば届出は完了です。
自宅や事務所から簡単に開業届を提出できる「e-Tax」。税務署への訪問制限を回避できるため、大きなメリットがあります。
青色申告を利用するための手続き
青色申告の利用には、事業開始後2か月以内に青色申告承認申請書を提出する必要があります。申請する方法を、以下の3項目にわけて解説します。
- 青色申告する条件と必要書類
- 青色申告承認申請書の提出方法と期限
- 青色申告承認申請書の書き方
青色申告する条件と必要書類
青色申告を行うには以下4つの条件をすべて満たさなくてはいけません。条件さえ満たせば、誰でも青色申告が可能です。
- 立場が個人事業主・農業者のいずれか
- 主な収益が事業所得・不動産所得・山林所得のいずれか
- 原則として事業開始日から2か月以内
- 収入・支出の記帳義務あり
青色申告特別控除は最大65万円を事業規模に関わらず控除できるため、大きな節税効果が得られます。
青色申告には「青色申告承認申請書」と事業内容を記載した書類を提出します。ほかにも新規事業者は「開業届出書」、法人は「法人税法に基づく青色申告承認申請書」が必要です。
申請書には事業者の名前、住所、事業の種類などの情報を記入します。申請が承認されると、当年の確定申告から青色申告が適用されます。一度承認されれば条件を満たしている限り、継続して利用可能です。
青色申告は節税効果が大きいので、事業を始める際はかならず利用しましょう。
青色申告承認申請書の提出方法と期限
青色申告承認申請書の提出には税務署で直接提出か郵送、e-Taxでのオンライン提出のいずれかの方法を用います。開業届と一緒に提出できるので、初年度から青色申告を利用するために同時に提出しましょう。
提出期限は開業日から2か月以内または当年3月15日のいずれか遅い方までです。期限内に提出しなかった場合は自動的に白色申告となります。
いかなる提出方法にせよ最適なものを選び期限内に提出することで、税務上のさまざまなメリットが受けられます。
青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書には、各種情報の正確な記入が求められます。
- 納税地・税務署名
- 住所
- 氏名
- 生年月日
- 屋号
- 事業内容
- 開始年
- 所得の種類
- 簿記形式
- 使用する帳簿
- 関与税理士
個人事業主と法人では記述内容が異なるので、適切な情報を記入しましょう。ほかにも開業届の写しや事業概要書など、別途書類が求められる場合があるため確認してください。
書式は税務署で入手またはインターネットでダウンロードできます。税務署に直接提出する場合は、開業届と一緒に入手しておくのがおすすめです。
申請書は二部作成し、1枚は控えでかならず保管してください。開業届と違い承認時に通知はないため、提出後に税務署から連絡がなければ承認されたと考えて大丈夫です。
上記の内容を守り手続きを進めることで、スムーズに提出・承認が行えます。
開業届や青色申告に関するよくある質問
開業届や青色申告に関するよくある質問と回答をまとめました。細かい疑問点がある方は参考にしてください。
- 青色申告は簡単にできる?
- 開業届と青色申告は一緒に提出が必要?
- 青色申告承認申請書の提出が遅れた場合は?
青色申告は誰でもできる?
青色申告は事業所得・不動産所得がある個人事業主や、山林所得がある農業者が利用可能です。青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除が受けられます。
法人は控除を受けられませんが、青色申告をすることで欠損金(赤字)を翌期以降に繰り越せます。逆に当期の赤字を前期へ繰り戻し、法人税の還付も可能です。
青色申告をするには収支を帳簿へ適切に記録し、税務署に青色申告承認申請書を提出しましょう。所得がなかった年や事業の開始・終了年でも、青色申告自体は行えます。
開業届と青色申告は一緒に提出が必要?
開業届と青色申告は異なる手続きですが、一緒に提出できます。ただし同時提出しなくてもかまいません。
開業届は事業開始から1か月以内、青色申告承認申請書は開業後2か月以内もしくは同年度の3月15日が期限です。期限さえ守れば、青色申告承認申請書は開業届の後に提出可能です。
青色申告承認申請書さえ出しておけば、確定申告の際に白色申告・青色申告のいずれかを選択できます。青色申告を利用する予定がなくても、選択肢を広げるために提出をおすすめします。
青色申告承認申請書の提出が遅れた場合は?
青色申告承認申請書は期限を過ぎても提出は可能です。ただし期限後の提出は翌年度の承認となるため、当年度は白色申告しかできない点に注意しましょう。
税務署によっては、提出遅れに特段の事情があった場合のみ適用除外の措置を取ってくれることがあります。提出が遅れそうな場合、早急に税務署に相談しましょう。ただし税務署の裁量次第なので、通常は年度末に向けて早めに手続きを行うのが1番です。
まとめ
開業届は事業開始を税務署に知らせるための重要な手続きです。開業届を提出することで事業開始の正式な記録が税務署に残り、事業運営の土台を築けます。
青色申告は事業者が帳簿を正確に記録し、代わりに節税効果を享受する制度です。青色申告を利用するには、一定の条件を満たす必要があるため、適切な書類を期限内に提出することが必須です。個人事業主ならば、開業届と同時提出をおすすめします。
青色申告承認申請書は、期限内の提出が極めて重要です。遅れてしまうと当年度の特典を受けられなくなります。
記事を参考に開業届と青色申告の手続きを適切に行い、円滑な事業運営を実現していただければ幸いです。