請求書の書き方がわからず、不安を感じている個人事業主(フリーランス)は多いです。インボイス制度の開始で請求書の書き方が複雑になりましたが、ポイントを押さえれば簡単に作成できます。
この記事では、正しい請求書やインボイスの書き方と、注意点を解説します。記事を読めば、誤りのない請求書を提出でき、取引先とのスムーズなやり取りが可能です。
新しい仕事や継続案件を安定して受注できるように、請求書の正しい知識を身に付けましょう。
請求書とは取引先から支払いを受け取るための書類
請求書は、商品やサービスを提供後に、売主が買主に対して発行する重要な文書です。取引内容や支払うべき金額、支払い期日などの詳細情報を含み、取引の証明として役立ちます。法的にも重要な書類で、取引の正確性を担保するために不可欠です。
請求書は税金計算の資料として重要で、事業の透明性を証明する書類としても機能します。正しい請求書を発行することで、支払い関係の手続きがスムーズになり、取引先との信頼を築けます。
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【項目別】個人事業主(フリーランス)の請求書の書き方
個人事業主(フリーランス)の請求書の書き方を以下の項目別に解説します。
- 宛名
- 請求内容
- 消費税に係る表示
- 発行日
- 支払い期日
- 発行者
- 振込先
- 特記事項
- 請求書番号
それぞれの項目を丁寧に埋めることで、正確な請求書を作成できます。
宛名
請求書の宛名は正式な取引先の名称を記載し、担当者の氏名がわかる場合は併記します。宛名には敬称をつけ、正確に書きましょう。
請求書の宛名は個人事業主(フリーランス)宛か、法人宛かにより異なります。それぞれ宛名の書き方例を以下に挙げます。
取引先が個人事業主(フリーランス)の場合
取引先が個人事業主(フリーランス)の場合は、以下の2パターンが一般的です。
- 屋号がある場合
- 〇〇〇〇 御中
〇〇 〇〇 様 - 屋号がない場合
- 〇〇 〇〇 様
苗字と名前の間にはスペースを入れると誤読を防げます。
取引先が法人の場合
法人への請求書の宛名は、以下の3パターンが一般的です。
- 会社名、部署名を正しく記載する
- 株式会社〇〇〇〇
本社 営業部 御中
〇〇〇〇株式会社
経理部
担当 〇〇 〇〇様
会社名は略称を使わず、正式名称で記載します。
複数の部署がある場合は、部署名も記載します。 - 担当者がいる場合は役職と氏名を記載する
- 株式会社〇〇〇〇
営業部 部長
〇〇 〇〇様
〇〇〇〇株式会社
経理部 課長
〇〇 〇〇様
担当者がわかっている場合は、役職と氏名を記載します。
役職と氏名は、それぞれ1行ずつに記載します。 - 担当者が不明な場合は「御担当者様」とする
- 株式会社〇〇〇〇 御担当者様
〇〇〇〇株式会社 御担当者様
担当者がわからない場合は、「御担当者様」とします。
宛名は請求書の左上に記載するのが一般的です。上記は基本的な書き方で、取引先との間で取り決めたルールなどにより、書き方は異なる場合があります。
請求内容
請求内容には、取引詳細と報酬の正当性の根拠を具体的に記載します。担当者が請求書を見たときに、何に対していくら支払う必要があるのかを理解してもらうためです。取引詳細は以下のような内容を記載します。
- 業務内容
- 具体的な業務内容を簡潔に記載します。「デザイン制作」と記載するのではなく「ホームページのデザインおよびコーディング」のように、仕事内容の詳細を記載してください。
- 成果物
- 納品した成果物(デザインデータや文章データ、プログラムなど)を具体的に記載します。
- 単価
- 具体的な単価と、根拠となる情報(実績単価や業界標準単価など)を記載します。金額の前に「¥」や、後ろに「円」か「-」を記載するのが一般的です。
- 作業量
- 従量課金の案件の場合は、作業量と単価を記載します。
- オプション料金
- オプションで発生した料金がある場合は、具体的な内容と料金を記載します。
取引詳細では業務内容と成果物を明確にすることで、取引内容の誤解やトラブルを防止できます。請求金額が妥当であることを示すために、報酬の正当性について具体的な根拠を記載しましょう。請求内容は長文にならないよう、箇条書きで簡潔に記載するのがポイントです。
消費税に係る表示
消費税に係る表示は、法律に基づいた適切な記載が求められます。消費税額が請求金額に含まれているかを明確にしましょう。消費税に係る表示は以下の内容を記載します。
- 税率
- 適用される税率(10%または8%)を記載します。
- 税額
- 計算式で算出した税額を記載します。軽減税率の対象品目がある場合は、税率ごとに合計した請求額(税込)を合わせて記載してください。
消費税を適切に表示することで、取引先が理解しやすく正確な税務処理ができます。
発行日
請求書の発行日には注意が必要です。請求書の発行日は「請求書を作成した日」が一般的ですが、取引先と認識のズレが生じないよう、事前に確認しておきましょう。
支払い期日
支払い期日の記載は非常に重要です。支払い期日は個人事業主側で一方的に決められません。契約時に取引先としっかりと話し合い、決定しましょう。決定した支払期日を、請求書へ正確に記入してください。
発行者
請求書を作成した個人事業主(フリーランス)の情報を記載します。発行者の情報は、以下の内容を記載するのが一般的です。
- 氏名:請求書を発行する個人事業主(フリーランス)の氏名
- 住所:請求書を発行する個人事業主(フリーランス)の住所
- 電話番号:連絡先となる電話番号(携帯電話番号でも可)
- メールアドレス:日常使用しているメールアドレス
- インボイス登録番号
発行者の情報を正確に記載することで、取引先が安心して支払い手続きできます。
振込先
銀行振込の場合は、以下の情報を正確に記載してください。
- 金融機関の名称
- 支店名
- 口座種別(普通口座や当座口座など)
- 口座番号
- 口座名義人の名前
取引先側に振込手数料が発生する場合は「振込手数料はご負担いただけますようお願いいたします」と明記します。振込手数料を請求書の金額に含める場合は「振込手数料を含む」と明記しましょう。
金融機関の名称(銀行名)は統廃合などにより、名称変更される場合があります。振込先を記載する場合は、金融機関コードや支店コードを記載すると判別しやすくなります。
特記事項
特記事項では支払い条件や注意事項を記載します。取引の円滑な進行とトラブル防止のために重要な項目です。
特記事項には以下の内容を記載します。
- 支払い期限と条件
- 具体的な日付を記載します。納品後30日以内の支払いが一般的です。「請求書発行日から◯◯日以内にお支払いください」という記載方法もあります。
- 支払い方法
- 具体的な支払い方法(銀行振込やクレジットカード、電子マネーなど)を記載します。
- 遅延時の対応
- 支払いが遅延した場合の対応を記載します。遅延損害金や利息の発生条件、催促のタイミングなどを記載しましょう。
- キャンセルポリシー
- サービスや商品のキャンセルに関するポリシーを記載します。キャンセル料が発生する場合は、発生条件や金額をあわせて記載しましょう。
請求書は手書きまたはパソコンのどちらの方法でも、正式に使用できます。紙印刷とPDFファイルなどの形式は、取引先に確認した上で提出してください。PDFファイルの請求書は、取引先により電子印鑑が必要になる場合があります。
請求書番号
請求書番号には連番や日付、特定のコード番号が使用されます。番号の重複に注意し、請求書の右上または左上に記載しましょう。
個人事業主(フリーランス)の請求書作成時の注意点
個人事業主(フリーランス)の場合は、正確で信頼性のある請求書の作成が取引先との信用に直結します。細心の注意を払って請求書を作成しましょう。
ここでは、個人事業主(フリーランス)が請求書を作成する際に、注意したい以下のポイントを紹介します。
- 宛名を正確に記載する
- 振込先が明記されているか確認する
- 振込手数料の負担について記載されているか確認する
- 源泉徴収税の有無を確認する
宛名を正確に記載する
取引先の宛名は正確に記載しましょう。宛名を間違えてしまうと、取引先からの信用を失うきっかけになりかねません。
特に「株式会社」「有限会社」「合同会社」は間違えやすい項目です。複数の支店と取引がある場合は、支店名の誤りがないよう注意が必要です。
振込先が明記されているか確認する
振込先は請求書内に記載します。振込先が正確に記載されていないと、取引先は振込手続きができません。他人の口座に振り込んでしまい、余計な手間が発生する可能性もあります。
取引先により別名義で登録している場合は注意しましょう。名義が未確認だと振込が大幅に遅れる可能性があります。
振込手数料の負担について記載されているか確認する
契約段階で振込手数料は取引先負担と定められている場合は、請求書に振込手数料の負担について記載します。どちらが負担するか決まっていない場合は、取引先と協議しましょう。
振込手数料を正確に記載しておけば、手数料に関するトラブルが防止できます。小さい金額ですが、細かいことも丁寧に対応するのが取引先との信頼関係につながります。
源泉徴収税の有無を確認する
個人事業主が請求書を作成する際には、源泉徴収の有無を確認することが大切です。取引先が法人の場合は源泉徴収が必要になる場合が多く、請求金額から所得税を差し引いた金額を受け取ります。個人との取引では、条件によって源泉徴収が免除されることもあります。
源泉徴収が必要な場合、税率は取引の内容や居住地によって変わるため、正しい税率を適用してください。源泉徴収票の発行や、源泉徴収に関する記載が求められることもあるので注意しましょう。
インボイスの書き方
2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されています。取引先が仕入税額控除の適用を受けるためには、帳簿や個人事業主から交付された適格請求書などの保存が必要です。
ここからは、インボイスの書き方について以下の内容を解説します。
- インボイスの記載事項
- インボイスの書き方のポイント
- 複数の書類でもインボイスに対応可能
- インボイスが個人事業主(フリーランス)に与える影響
インボイスの記載事項
インボイスの記載事項を以下にまとめました。
- 請求書の発行者の氏名または名称
- 取引が行われた年月日と請求書発行年月日
- 取引の内容
- 取引の合計金額
- 軽減税率を導入している場合はその旨を示す記載
- 税率10%、8%それぞれに区分した税込金額、もしくは税抜き金額と消費税の合計
- 税率ごとに区分した消費税の金額
- 「適格請求書発行事業者」の登録番号
インボイスに記載する内容は、仕入税額控除に必要なため正確に記載してください。
インボイスの書き方のポイント
インボイスでは、従来の区分記載請求書などになかった項目の記載が義務付けられています。新たに義務付けられた項目の書き方のポイントを以下にまとめました。
- 登録番号を記載する
- 個人事業主(フリーランス)が「適格請求書発行事業者」として登録した際には、登録番号が発行されます。取引先が仕入税額控除の適用を受けるためには登録番号が必要なので、忘れずに記載しましょう。
登録番号の記載例 T1-0123-4567-8900 - 税率ごとの商品価格の合計金額を記載する
- 従来の区分記載請求書にある項目「小計」「消費税」「合計」とは別に、税率ごとの区分が必要です。10%対象と8%対象で、それぞれの税率ごとに商品価格の合計金額を記載します。
- 税率ごとに消費税金額を記載する
- 税率ごとに商品価格の合計金額に係る消費税を記載します。10%対象と8%対象で、それぞれの消費税額を記載しましょう。
上記のポイントを意識することで、インボイス制度にもスムーズに対応できます。
複数の書類でもインボイスに対応可能
請求書や納品書など、取引内容が複数の書類におよぶ場合も、インボイスとして認められます。複数の書類でインボイスに対応するためには、各書類の相互関連を明確にする必要があります。
複数の書類でインボイスに対応する書き方のポイントを以下にまとめました。
- 書類同士の関連性を明確にする
- 書類ごとに発行番号を付与して関連性を示します。各書類には共通の情報(取引先や取引年月日など)を記載します。「詳細は納品書を参照ください」など書類間での参照関係を明記しましょう。
- 記載事項をすべて満たす
- インボイスとして認められるための記載事項を、すべて満たす必要があります。区分記載請求書の内容に「登録番号」「税率ごとの商品価格の合計」「税率ごとの消費税金額」を記載しましょう。
- 記載後は最低5年保存する
- インボイスは最低5年保存が必要です(5年以降は取引先国や地域により異なる)。原本と控えの2通を発行します。原本を取引先に渡し、控えは自身で保管します。紙媒体の場合はファイルなどに整理して保存、電子媒体の場合は定期的にバックアップを取りましょう。
インボイスが個人事業主(フリーランス)に与える影響
インボイス制度により、免税事業者と取引を行っている課税事業者は仕入税額控除が適用できません。取引先との間で取引価格の値上げや値下げ、仕入税額の負担分担について合意する必要があります。
個人事業主(フリーランス)が免税事業者の場合と、課税事業者の場合でそれぞれ以下の影響があります。
免税事業者の場合
- 課税事業者側が消費税を負担するため取引が減少する可能性がある
- 消費税の負担分について値下げ交渉をされる可能性がある
- 取引条件を課税事業者に限定している新規取引は獲得できない
課税事業者の場合
- 所得税に加えて消費税の確定申告が必要になる
- インボイスを発行するための事務作業が増える
- 免税事業者との取引で納税額が増える
それぞれの影響を把握し、どちらの事業者になるか判断しましょう。インボイス制度対応の請求書作成は、クラウド会計システムを上手に利用しましょう。おすすめのクラウド会計システムは以下の3つです。
よくある質問
個人事業主(フリーランス)が請求書を発行するときの、よくある質問をまとめました。
請求書の発行はいつまでに行うべき?
請求書の発行時期には明確な規定はありません。取引先との契約内容により異なりますが、商品やサービスの提供直後または月末の発行が一般的です。
他にも請求書の発行は以下のようなタイミングもあります。
- 定期的にサービスを提供する場合は、月次や週次ごとに発行する
- 支払い期日の数日~数週間前に発行する
- 取引先が指定した時期に発行する
請求書を発行する時期は、取引先との条件をよく確認しましょう。
間違った請求書を送ってしまったときはどうすればいい?
間違った請求書を送ってしまった場合は、以下の手順に沿って正しい請求書を再発行しましょう。
- 状況を把握する
- 何を間違えてしまったのかを取引先に確認し、具体的に状況を聞き取ります。すでに支払いが完了している場合は、誠意を持って返金手続きをし、信頼関係を損なわないよう努めましょう。
- 修正請求書を作成する
- 間違った内容を修正し、修正請求書を作成します。修正請求書であることを明記し、原本の請求書番号や修正内容、修正年月日、作成者情報を記載しましょう。
- 修正請求書を送付する
- 修正請求書を作成後は、速やかに取引先に送付します。PDF送付や郵送(簡易書留や速達がベター)、対面できれば手渡しで謝意を伝えましょう。
上記の手順でスムーズに請求書を再発行できます。
まとめ
請求書は、取引先から適切な支払いを受け取るために欠かせない書類です。個人事業主(フリーランス)が請求書を作成する際は、宛名や請求内容、消費税表示などの項目を正しく記載しましょう。
請求書の書き方のポイントは以下のとおりです。
- 宛名や請求内容、消費税表示など基本的な項目を正確に記載する
- インボイスに対応した内容(税率ごとの消費税や登録番号)を正確に記載する
- 契約内容に基づいた期日までに請求書を発行する
正しく記載された請求書を決められた期日までに発行することは、取引先の信頼獲得につながります。請求書の書き方をしっかり理解し、スムーズな取引を行いましょう。
» 個人事業主(フリーランス)の経費の基準