確定申告で損をしない「青色申告と白色申告の違い」をわかりやすく紹介

確定申告で損をしない「青色申告と白色申告の違い」をわかりやすく紹介

確定申告と聞いただけで高いハードルを感じる方もいらっしゃるでしょう。白色申告青色申告とでは何がどう違うのか、理解していなければ選び方もわからず、多くの方が迷うところです。

白色申告と青色申告で最も大きく異なるのは、税金の優遇措置の有無です。税金の優遇措置を知らずに申告方法を選択すると、損をする可能性があります

この記事では白色申告と青色申告の違いを具体的に比較しながら、メリット・デメリットをわかりやすくまとめています。選び方のポイントも解説していますので、最後までご覧ください。記事を読めば、どちらの申告方法にするか迷わず選択できます。自分に合った方法を選んで節税効果を高め、利益を最大化しましょう。

確定申告とは

確定申告とは

確定申告とは、申告納税制度に則り、1年間で得た所得に対する税金を計算して国に報告・納付する手続きです。所得税は、納税者が自分で所得金額と税額を計算して納税する「申告納税制度」によって徴収されます。居住地にかかる住民税も合わせて計算されます。

確定申告が必要な人

確定申告が必要なのは、主に以下に該当する方です。過払いの税金を還付してもらうために確定申告するケースもあります。

  • 個人事業主
  • 一定以上の収入があるパート・アルバイト
  • 副業や投資など賃金以外の利益を得た会社員や公務員
  • 給与の年間収入金額が2,000万円超
  • 「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例を受ける人

確定申告の申告方法

確定申告は通常、翌年の2月16日から3月15日までの期間で行われます。申告はインターネットによるe-Tax(電子申告)か、紙の書類による提出かで選択可能です。e-Taxには以下の3つの選択肢があります。

  • インストール版
  • Web版
  • アプリ版

確定申告の必要書類

申告方法や内容によって異なりますが、確定申告の際は、基本的に以下の書類の添付や提示が必要です。

  • 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
  • 青色申告決算書または収支内訳書
  • 所得控除の証明書(医療費控除の明細書、保険料や掛金の証明書など)

所得控除は節税に欠かせない重要な要素です。領収証などしっかりと保存しておきましょう。誤った内容で控除を申告すると、追徴税や罰金が科されるため注意が必要です。

確定申告しないリスク

税務署によって確定申告が必要と判断される場合、申告を行わなければ以下のペナルティを課せられます

ペナルティ内容追徴税率など
無申告加算税・期限後に申告・決定がなされた場合
・期限後に修正申告・更正があった場合
・50万円までの部分は15%
・50万円超300万円以下の部分は20%
・300万円超の部分は30%
延滞税納期限までに納税しなかった場合・納期限の翌日から2ヶ月以内は2.5%
・納期限の翌日から2ヶ月経過した翌日以降は8.7%
重加算税申告すべき事実の隠蔽や仮装があった場合・期限内に申告があった場合35%
・期限内に申告がなかった場合40%
刑事罰偽りや不正行為で所得税を免れたり還付を受けた場合・10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
・懲役・罰金を併科
確定申告しないリスク一覧

白色申告とは

白色申告とは

白色申告とは、複雑な帳簿付けの必要がない比較的簡単な申告方法です。青色申告の承認を受けていない場合は、白色申告で申告します。白色申告の場合、開業届の提出は必要ありません。

白色申告のメリット

白色申告は、簡易帳簿(単式簿記)で対応できるのが最大のメリットです。記帳義務の緩和により提出書類が少なく、会計の専門知識がない方でも容易に処理できます。会計ソフトの導入や専門家への依頼も必要なく、初期投資や時間、労力も抑えられます。

白色申告に税務上のメリットはありませんが、基本的な経費控除は利用可能です。事業所得が少ない場合は青色申告による節税効果も得られないため、手間のかからない白色申告を選んだほうが効率的でしょう。所得が増えて節税対策が必要なときは、青色申告を検討してください。

白色申告のデメリット

白色申告を選択する際は、以下のデメリットを把握しておきましょう。

  • 税務上の優遇措置がなく節税メリットが少ない
  • 事業損失の損益通算や繰越控除が受けられない
  • 少額減価償却資産の特例が利用できない
  • 簡易帳簿のため正確な経営分析が難しい
  • 融資審査などでの信頼性が低く不利となる

白色申告では、青色申告のような優遇措置や特例が受けられません。所得金額が多い場合、青色申告のほうが大幅に有利になります。事業規模の変化に応じた申告方法の見直しも必要です。

青色申告とは

青色申告とは

青色申告とは税務上の優遇措置を受けられる申告方法で、個人事業主や法人が利用できます。ただし、青色申告するには以下の3つの要件があります。

  • 青色申告の承認を受ける
  • 開業届を提出する
  • 複式簿記で記帳する

青色申告する場合は、申告する年の3月15日までに、税務署に青色申告承認申請書を提出して承認を受ける必要があります。個人事業を新たに開始した場合は、開業届と共に提出します。

青色申告のメリット

青色申告は税負担の軽減に役立つ制度で、以下のとおり複数のメリットがあります。

  • 青色申告特別控除で最大65万円の所得控除が受けられる
  • 家族従業員の給与が経費として認められる
  • 損失申告で3年間赤字を繰り越せる
  • 少額減価償却資産の特例を利用できる場合がある

青色申告の特別控除には要件によって以下の3通りの控除額があります。

  • 10万円控除
  • 55万円控除
  • 65万円控除

65万円の控除を受けるには、e-Taxによる申告が必須です。

青色申告のデメリット

青色申告は特別控除などの魅力がある反面、以下のデメリットもあります。

  • 事前の承認申請が必須である
  • 複式簿記による記帳の手間がかかるうえ、会計知識がないと難しい
  • 会計ソフトの導入や専門家への依頼で費用がかかる

青色申告は白色申告よりも多くの時間やコスト、労力を要します。状況や能力に合わせて選択しましょう。

【項目別】白色申告と青色申告の違い

【項目別】白色申告と青色申告の違い

有利な選択をするためには、白色申告と青色申告の具体的な違いを把握しておく必要があります。

対象者

白色申告と青色申告の対象者の違いは以下のとおりです。

白色申告の対象者
青色申告の申請をしていない方全般
青色申告の対象者
所得税の青色申告承認申請書を税務署に提出し、承認を受けた方

記帳方法

白色申告と青色申告では、記帳方法が以下のように異なります。

白色申告の記帳方法
簡易簿記(単式簿記)で記帳
青色申告の記帳方法
複式簿記で記帳

青色申告の記帳は、収支のみの記録で済む白色申告より複雑です。仕訳帳と総勘定元帳の主要簿のほか、事業内容に応じて以下の補助簿や補助元帳が必要です。

  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 売上帳
  • 仕入帳
  • 売掛金元帳
  • 固定資産台帳

青色申告では収益や費用を詳細に分けて記帳します。貸借対照表や損益計算書を作成して、資産や負債の増減も正確に示さなければなりません。記帳方法の違いを理解し、ビジネスや財務の状況に応じて最適な申告方法を選択することが大事です。

税務上の優遇措置

税務上の優遇措置

白色申告と青色申告の税務上の優遇措置には、以下のとおり大きな違いがあります。

白色申告の税務上の優遇措置
経費計上は可能だが、税務上の優遇措置がない
青色申告の税務上の優遇措置
・経費計上以外に特別控除が認められる
・家族従業員の給与を経費にできる
・赤字損失を3年間繰り越せる
・少額減価償却資産の特例が利用できる

青色申告の選択は、事業運営で発生する税負担を軽減し、節税するのに役立ちます

事前申請の有無

青色申告を利用するには事前申請して承認を得なければなりませんが、白色申告の場合は申請の必要がありません。

青色申告を希望する場合、申告する年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出するのが原則です。ただし1月16日以降に新規開業した場合は、事業開始日から2か月以内が提出期限となります。

白色申告と青色申告を選ぶときのポイント

白色申告と青色申告を選ぶときのポイント

白色申告と青色申告のどちらを選ぶかは、事業や個人の状況に応じて異なります。以下の3つのポイントで、自分に合った申告方法を選びましょう。

  • 節税効果
  • 管理の手間・コスト
  • 専従者給与の特例

節税効果

節税効果

節税効果を期待する場合は、青色申告をおすすめします。白色申告には大きな節税効果がないからです。

青色申告では最大65万円の特別控除や事業専従者控除の税制優遇が受けられ、白色申告より税負担を大幅に軽減できます。損益通算や繰り越し控除も可能で、赤字損失を翌年以降に繰り越せるのも大きなメリットです。節税効果が高まれば、利益率もアップします。

管理の手間・コスト

管理の手間とコストは、白色申告と青色申告で大きく異なります。節税効果より、手間やコストを抑えることを優先させたい場合は白色申告がおすすめです。

白色申告
・簡易的な帳簿で、取引ごとでなく日々の合計金額をまとめて記載してもよい
・経理処理が簡易なため労力や経費の負担が少ない
青色申告
・詳細な帳簿付けが必須である
・会計ソフトの導入や専門家への依頼でコストがかかる

青色申告の場合は会計処理が複雑で、会計ソフトは必須といえます。事業規模が大きければ、税理士など専門家への依頼が必要なケースもでてくるでしょう。専門家に依頼すれば、正確な帳簿管理で税務調査のリスクなども低減できますが費用負担が増えるのが難点です。

事業で得られる利益に対して、会計管理の手間やコストの負担が大きすぎる場合は、白色申告を選ぶといいでしょう。

専従者給与の特例

専従者給与の特例を活用したい場合は、青色申告をおすすめします。白色申告でも特例は受けられますが、青色申告より条件が厳しいからです。

専従者とは家族従業員のことです。事業主が生計をともにする家族に給与を支払っても、原則、経費にはできません。しかし、一定の要件を満たせば専従者給与の特例が認められ、経費にできます。

白色申告と青色申告で特例の内容や要件がどう異なるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

白色申告の場合

白色申告の場合、一定の要件を満たすことで「事業専従者控除の特例」が受けられます。ただし1人あたりの控除額には制限があります。控除できるのは、以下の金額のうち最も低い金額です。

  • 事業専従者が事業主の配偶者である場合は86万円
  • 配偶者以外は50万円
  • 控除前の事業所得などの金額を、専従者の人数に1を足した数で割った金額

白色申告で事業専従者控除の特例を受けるには、以下の年齢や期間などの要件を満たす必要があります。

  • 事業者と生計を一にする配偶者または配偶者以外の親族であること
  • 申告する年の12月31日時点で15歳以上であること
  • 申告する年を通じて6ヶ月超の期間、当該事業所に専従者として従事していること
  • 確定申告書に、特例による控除を受ける旨や金額などの必要事項を記載すること

青色申告の場合

青色申告の場合は、以下の要件を満たすことで「青色事業専従者給与の特例」を受けられます。

  • 青色事業専従者に支払った給与であること
  • 税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること
  • 届出書に記載された範囲内の金額が、記載された方法で支払われていること
  • 労務の対価に相当すると認められる金額であること

青色事業専従者給与の特例では、白色申告のように上限額が明確に定められていません。しかし、税務署に「過大である」と判断された部分は必要経費として認められないので注意しましょう。

白色申告・青色申告のよくある質問

白色申告・青色申告のよくある質問

白色申告か青色申告かの選択をする際に、よくある質問をまとめて紹介します。

白色申告と青色申告どちらが税金は安くなる?

同じ所得金額で比較した場合、特別控除などがある分、青色申告のほうが税金の負担が軽くなります。白色申告には基本控除以外に大きな優遇措置がありません。赤字の繰越ができる青色申告は、将来的な節税効果をもたらす場合もあります。

白色申告に税制優遇はありませんが、手続きが比較的簡単で会計処理にかかるコストや手間を抑えられます。青色申告は特別控除が魅力ですが、要件を満たさなければ利用できません。複式簿記による帳簿付けや決算書の作成など手続きも複雑で、手間やコスト負担が増す可能性があります。

節税効果だけでなく、手間やコストも考慮して、ベストな方法を選択しましょう。

初めての確定申告では白色申告と青色申告どちらを選べばいい?

所得が経費で相殺となるなど、収入が低い場合は、処理の簡単な白色申告がおすすめです。事業を継続したり拡大したりする予定がない方も白色申告で様子を見るといいでしょう。

特別控除や損失繰越ができるのは青色申告だけです。税金の負担がある方はもちろん、現時点で赤字でも、事業拡大の予定がある方にも青色申告をおすすめします。複式簿記で手間やコストはかかりますが、節税効果は魅力的です。

まとめ

まとめ

個人事業主にとって確定申告は、税負担額を確定する重要な手続きです。確定申告には白色申告と青色申告があります。

白色申告
簡易帳簿で対応できますが、節税メリットが限られます。利益や税負担の少ない方に向いています。
青色申告
税務上の優遇措置があり節税効果が高いですが、複雑な帳簿付けが必要です。税負担のある方や、損失を繰越したい人に向いています。

最初は白色申告からスタートして、利益が出るようになってから青色申告に変更する方法もあります。最初から青色申告で、事業開始時の赤字損失を将来的に繰り越すことも可能です。状況に応じて最適な申告方法を選択しましょう。